はじめに
ここ数年で、暗号通貨やブロックチェーンをめぐるエコシステムは、総じて発展を遂げており、インターネット初期には考えることができなかったほどに、多様な創造性を発揮しています。1996年以来、学界からは12,000を超える暗号に関する論文が発表され、特に近年は多数の論文が世に送り出されています。このように着実に関心が高まっているのは、ブロックチェーン業界や、科学哲学を通じて進化を遂げる初の第3世代ブロックチェーン、Cardanoに対して人々の興味が集まっていることの表れです。こうした関心は、Cardanoのネイティブなデジタル通貨であるADAやデジタル資産の性質、あるいは従来の銀行や通貨体制との相違点にも向けられています。現在、Cardanoインセンティブ付きテストネットが進行しており、Cardanoブロックチェーンエコシステムは、成熟期に向けて開発が進められています。
Cardano ADAとはどのような通貨であるか
Cardano ADAは、供給量が固定されたデフレ型デジタル通貨です。セキュリティを実証できるスマートマネーで、Cardanoブロックチェーンプロトコルネイティブであり、ブロックチェーンネットワーク全体の分散化を確保する上で重要な役割を果たしています。Cardanoブロックチェーンプロトコル自体がリサーチ主導のアプローチを通じて進化しているため、Cardanoの開発者たちは、ADAに対して科学的なアプローチを採用しています。
近年、一部の投資家は従来型資産やビットコインを上回る資本の拡大を期待しつつあります。彼らが期待するのは、ステーキング報酬や自社トークンの発行(独自アセットなど)といった、デジタル通貨に関連したメリットです。Cardano ADAは、世界中に拡大し、Ni-Po-Powを通じて他のブロックチェーンや従来型システムとも相互運用性を備えているため、このような要望に応えることが可能です。Cardanoエコシステムには、ブロックチェーンの持続可能性を支えるTreasuryも含まれています。
Cardano Treasuryは従来の米国のBanking Treasuryとは異なります。今回のブログでは、この相違点について詳細にご紹介するとともに、TreasuryがCardanoエコシステムにもたらす優れたメリットについても説明します。そのためにまず、米国の従来型貨幣システムの役割と機能を確認しましょう。
従来の貨幣銀行制度
「(米国の)財務省の歴史は、アメリカ独立革命の混乱のなかで始まりました。すなわち、フィラデルフィアの大陸会議において、イギリス本国との独立戦争への資金調達という重大な問題について討議したときのことです」これは、244年前という、宇宙の時間で見ればまばたきにも満たないほど僅かな時間を遡った時代の話ですーー「(米国)議会には、税金を賦課し徴収する力はなく、また、海外の投資家や政府から資金を確保する確たる基盤もありませんでした」
現在、米国財務省の役割は、税金の徴収や連邦財務の管理に加え、連邦の金融関連法を施行し、通貨や貨幣を管理し、国立銀行や貯蓄機関を監督し、経済政策に対し助言を行うことです。
政治家やプロジェクトの指示に基づき、米国財務省は固定金利の国債(IOUなど)を発行します。これは、本質的には投資家や銀行にとって債務証券と呼ばれるものですが、彼らはその利子を目的に、一定期間政府に金銭を貸し出したいと考えます。投資家に支払われる利子は、将来の課税を財源としています。このような債券が国債です。債券はこれまで、安全性が高く保証された投資であるがゆえに、リターンが比較的少ないものでした。
Cardanoエコシステムでは、ステークホルダーは、現行の米国の通貨システムのように根拠もなくCardano ADAデジタル通貨を新たに発行することはできません。このため、支出は実際のデータをもとに、すぐれて効果的な方法で抑制する必要が生じます。
米国財務省は、定期的に債券の入札を行い、銀行が競って債券を購入する場を設けます。この「公開市場操作」と呼ばれるプロセスを通じて、銀行は債券を連邦準備銀行に対して販売します。彼らはこのような売買からの利益を獲得します。
連邦準備銀行は、実際には銀行預金の存在しない口座に対して、これらの国債の支払いを行います。連邦準備銀行は民間銀行であり、連邦機関ではありません。通貨は、何もないところから作り出されます。銀行はそうした通貨を用いて、次の入札で多くの国債を購入します。米国財務省はこうして得られた通貨を、公共の諸機関へと預け入れるのです。
銀行はさまざまなルールに基づき資金の貸出を行いますが、一般的には、準備金1ドルにつき9ドルを貸し出すことが可能です。こうして、本質的には無であるところから金銭が作り出されます。このような少額の準備金に基づく貸出や中央銀行の仕組みは、千年以上に渡り引き継がれてきました。その結果として、金融が破綻した場合には、多くの富と権力を持つ者だけが世代を超えて資産を引き継ぐことができる一方、多くの人々はまたゼロからやり直しを強いられることになるのです。
連邦準備制度理事会の決定した金利は銀行のプライムレート(最優遇される顧客に対する金利)、変動金利型住宅ローン(ARM)、インタレストオンリーローン、クレジットカードの金利に影響を与えます。ARMとは、インデックスに基づき利率が決まるローンです。インタレストオンリーローンとは、借り手が利息のみを支払うARMのことで、最初の数年は低利率の「当初優遇金利」が設定されることもよくあります。
法律や電子システム、諸機関、製品が現在の金融システムを実現し、支える一方、抜け穴も存在するのが実情です。こうした金融システムには272の中央銀行に加え、著名な投資会社等、さまざまなプレイヤーが関与しています。ここに挙げる他にも、法律や機関、システムが多数存在します。重要なのは、現在のシステムの一枚岩的な性質を実証し、探求心旺盛な研究者たちに、新たなレビュー方法を提供することです。
On Chain Governance
CardanoTreasuryの本質的な目的は、暗号通貨の長期的な発展と保守のため、資金調達の持続可能性に関する問題を解決することにあります。Cardano Treasuryにおける議決権は、対応するステークに比例します。投票にあたっては、それを行うものが身元を明かす必要はありません。システムは、新たに生み出されたADA、ステーク報酬の手数料、寄付から資金を集めます。Cardano Treasuryシステムについては、「A Treasury System for Cryptocurrencies: Enabling Better Collaborative Intelligence」と題された50ページにも及ぶTreasuryシステムについての論文に詳細が定義されています。
CardanoはLiquid Democracyと呼ばれるシステムを導入しています。これは、間接民主制と直接民主制のハイブリッドシステムです。ADAステークホルダーは、直接投票するか、投票権をその分野の専門家に委任するかを選択することができます。現在の米国貨幣制度を投票という観点から見ると、ドメインの専門家になることには本質的にはなんのインセンティブもありません(ロビーストを除いては)。つまり、ヘルスケアであれテクノロジーであれ、その分野について優れた専門知識を持つその道50年のベテランの一票であっても、なんの専門知識もないティーンエイジャーの一票と同じ重みでとらえられることになります。
ZhangらはTreasury Systemについての論文で、次のように述べています。
「Treasuryシステムの核となるコンポーネントは、コミュニティのメンバーが共同して何らかの結論や決定に至ることができる意思決定システムである。Treasury期間中は、誰でもプロジェクトに対する資金調達を提案することができる。利用できる資金が少ない場合は、そのうちの少数のみがサポートされる。このため、コラボレーティブな意思決定のメカニズムが必要である」
プロトタイプシステムでは、「はい/いいえ/棄権」の3つの選択肢を提供する投票モデルを採用しています。Treasuryファンドの一定の割合(20%など)は、投票委員会のメンバー、投票者、専門家への報酬に使われる予定です。
では、資金はどのように分配されるのでしょうか。Zhangらは次のように説明しています。「獲得した票数に従って、提出された提案の順位を付けることでプロジェクトを選出する方法を採用する。採用するプロジェクトの予算額は、treasuryの予算総額を超えないこととする。しかし、多数のプロジェクトが提出されたり、他の領域についての議論に集中してしまったりするため、不可欠な分野の資金が不足するリスクは存在する。提案を分類し、それぞれのカテゴリーに予算を割り当てることで、必須の分野の資金を確保することが可能である」カテゴリーには、マーケティング、技術導入、開発、セキュリティ、組織とマネジメント、その他の包括的なカテゴリーなどがあります。
Treasury Systemに関する論文では、Cardanoプロトコルにおける合意を評価する2つの方法の概要が、次のように説明されています。「一般的に、Consensus法(全ての参加者における合意を評価する)とProximity法(個別ソリューションと集合的ソリューション間の合意を評価する)が合意を評価する際に利用される」Cardano Treasuruシステムは開発中であるため、その機能性がユーザー発行の資産やサイドチェーンにまで拡張されるかどうかは今後決定されることになります。
最後に
コラボレーティブな意思決定(コミュニティインクルーシブな参加)の目的のひとつは、コミュニティにおける関係性の改善であり、参加者が関与するコミュニティは受動的なコミュニティよりも優れているとする研究もあります。これによりADA保有者は、ステーキングを通じて積極的に決定内容や方針を評価するようになり、コミュニティ全体が意思決定をサポートするようになります。
Cardanoブロックチェーンプロトコルとネイティブデジタル通貨ADAは、分散化、機能性、ユーザビリティの観点において、次なるステップを体現しています。Cardanoネットワークは、検証可能で無作為な機能/数や互いに均衡を保ったステークホルダーが分散化を確保することで、安全が保たれています。ステークホルダーにとって主力となるブロックチェーンプラットフォームとして、特に拡張性、持続可能性、相互接続性を実現する設計となっているのです。